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乳がんの治療について


実は私の母が去年の12月9日に亡くなりました。
最愛の母でした。明るくて皆に愛される自慢の母でした。
若い頃は美人でモテモテだったみたいですよ~(笑)。
満79歳でした。あと5年ぐらい、せめて平均年齢ぐらいまで生きていて欲しかった。
いろいろと親不孝な息子だったので、親孝行してあげたかった・・・

9年程前に乳がんを手術、既にリンパ節にがんが転移している状態でしたが、明るい性格もあり常に前向きでした。昨年中頃から急に体重が減り始め、最後の望みを託した手術をして18日後、自宅に戻ってきてから3日後に亡くなりました。最後は二酸化炭素が体内に溜まってきて、それが麻酔のような効果になり眠るように亡くなりました。
亡くなる数日前までリハビリの先生に教わった手足の運動をしていて、身体が良くなったらまた旅行に行きたいと言っていたので、最後は眠るように逝ったのは、明日いつも通りに目覚めて、いつか元気になれるという希望を夢見て逝けたかなと、それが唯一の救いかなと自分に言い聞かせております。
でも母がいなくなったという現実を受け入れるには、まだまだ時間が掛かりそうです。

今回母のことを書いたのは乳がんの治療に関して、あの時こうしておけば良かったと思えることがいくつかあったので、同じ乳がんで治療をなさっている方々の参考に少しでもなってくれたら幸いとの思いからです。ただし素人が感じたことですので、あくまでも参考ということでお願いします。

先生の言っていることが全てではない
母の治療・手術は最初から最後までほとんどを大学病院で一貫して行いました。その大学病院は乳がんの治療ではそれなりに名が通っており、そこの先生に任せておけば大丈夫と思ったからです。
実際手術は成功しました。ただその時点で既にリンパ節にがんの転移が見受けられましたので、100%摘出はできませんでしたが納得しております。

時がたって昨年前半、それまでにいろいろな服用タイプの抗がん剤治療を行っておりましたが、吐き気などの副作用があり、その時点で先生(仮にA先生としておきます)から次に使用する抗がん剤がもう無いと言われました。では次の治療はどのようなことが考えられるかA先生に質問したところ、明確な答えは得られず・・・。また母やその家族に対するA先生の接し方に疑問が募り、結局自分たちで次の病院や治療法を探すことにしました。

新たな治療は免疫治療の樹状細胞ワクチン療法です。本人の身体から取り出した単球を培養したワクチンを5回に分けて注射にて投与する治療です。詳しいことは後述しますが、その4回目の注射の時に患部が突然大きくなっていることが判明、急遽患部の治療(手術)を行うことをB先生に勧められ、最近治療成績が良いとされている新動注化学療法ができる病院を紹介され、手術を行うことになりました。

新動注化学療法
正式には「皮下埋め込み型リザーバー鎖骨下動注化学療法」と言うそうです。血管内治療の一種でがんに栄養を送る動脈内にカテーテルを進め、塞栓物質を注入してがんの栄養血管を遮断して腫瘍細胞を死滅させる一方、直接濃度の高い抗がん剤を患部に注入して効果を上げる方法です。直接患部に抗がん剤を注入するので吐き気などの副作用が少ないとされています。ただ従来の動注療法はいくつかの問題点があったので、それらを改善したのが今回の新動注化学療法です。
実際に手術は成功し短い期間ではありましたが吐き気などの副作用はありませんでした。ただ抗がん剤の効果は現れず、次の別のタイプの抗がん剤を試す前に母は亡くなってしまいました。

ここで私が残念に思っていることが2つあります。
1つ目は患者が選択できる有益な情報をもらえなかったということです。
実は今回の最先端治療法である新動注化学療法は、一貫して治療を行ってきた大学病院内にありました。わずかワンフロアーの違いで最先端治療が行われていたにもかかわらず、一切そのことを患者側に情報として提供されなかったのです。少なくともあと2~3年前に、もう少し体力があるときにこの新動注化学療法を行っていたら結果はもっといい方向に進んでいた可能性があります。事実母は服用タイプの抗がん剤治療による副作用に何年も前から苦しんでおりました。そのことを考えても副作用の少ない新動注化学療法を早い時期に行うべきだったと後悔しております。
ちなみに新動注化学療法の手術後に投与した抗がん剤は今回1種類のみで効果は現れませんでしたが、その他に何種類かあるとのことですので、体力があるときでしたら別の抗がん剤も試すことができ、良い方向に進めたかもしれないと考えると残念でなりません。

もちろん病院側も言い分はあります。なぜ最先端の新動注化学療法のことを同じ病院内で行っていたにもかかわらず教えてくれなかったのかを尋ねたところ、A先生曰く「日本乳癌学会の診療ガイドラインでは動注化学療法(過去のタイプの治療法をいっていると思います)はDランク、つまり行わないよう推奨されている。だから提案しなかった」とのことでした。しかし他の先生に聞いてみたところ「確かに初期の手術段階ではDランクであるが、それ以降の状況ではそうとも言えない」とのことでした。

素人の私にはどちらが正しいのかわかりません。また新動注化学治療はあくまで局所治療です。母のようなリンパ節を介して全身にがんが転移している状況では完治はあり得ませんが、この療法でがんの大本である部分を治療し、その後全身治療に有効とされる免疫療法等で治療を行うなど可能性が広がります。そういった意味でも選択肢の提示をして欲しかったのです。

2つ目は体力のあるうちに出来ることをするということです。
新動注化学療法の手術自体は成功しました。ただその後の抗がん剤治療は1種類のタイプを試したのみで、その後別タイプを試みることが出来ずに亡くなってしまいました。これが2~3年前の体力がある時期でしたら話は変わっていたと思います。
2~3年前といえば服用タイプの抗がん剤による多少の副作用はありましたが、母も私もA先生の言葉を信じ当時行っていた治療法が一番良いと思っていた時期です。当時は別の治療法を考えるなんて、これっぽっちも思いませんでした。でも後になって思えば、やっぱりあの時に考え行動に移しておくべきだったんです。もちろん今だからこそあの時期にああしておけば良かったと客観的に言えるのですが。また、2~3年前に新動注療法を行ったとして100%良い方向に進むとも限りません。ですが私と同じように後から後悔しないように、今の思いを素直に伝えさせていただきました。

樹状細胞ワクチン療法
先に述べたように服用タイプの抗がん剤治療の次に行ったのが免疫治療の樹状細胞ワクチン療法です。本人の単球を培養して作られたワクチンということで、副作用として考えられるのは発熱または注射部位が赤くはれる程度であるとの説明を受け、母にこれ以上副作用の苦しみを負わせたくない一心から治療を受けることにしました。

最初にワクチン治療の元となる成分採血(単球の抽出)を行いました。この時通常の倍の単球が確保されたとのことで、ワクチンも通常の2倍製作できたとのことでした(実はこの倍という量が私のモヤモヤの原因です)。そこでB先生は1回の注射につき2倍の量のワクチンを投与しました(私はてっきり1回に投与する量は通常と同じで、投与期間を2倍にするものと考えておりました)。
そして1回目の投与結果ですが腫瘍マーカー(がんの量、CER)の数値は32.2から20.8に減っており、確実にがんの量は少なくなっていました。先生もこの数値には満足されておりました。ただリンパ球の数が901から175に激減しておりました。
樹状細胞ワクチン療法を簡単に説明しますと「がんの特徴を持つ物質(がん抗原)の特徴を認識させた樹状細胞を患者の体内に戻し、これにより樹状細胞がリンパ球にがんの特徴を覚え込ませ、リンパ球ががん細胞のみを狙って攻撃する」治療法です。つまりがん細胞をやっつければリンパ球の数は減っていきます。

樹状細胞ワクチン療法はリンパ球を減少させる
ここが問題でした。がん細胞をやっつけたらリンパ球は減っていくのです。つまり2倍のワクチンを投与し多くのがん細胞をやっつけたら、それだけ多くのリンパ球が減っていくのです。
まだ体力のある患者さんや若い人でしたら食事などの栄養補給で減ったリンパ球を補うことが出来ます。ただ母の場合はリンパ球が激減したために体力が急に衰え、食事が取れなくなってしまいました。つまりリンパ球を補給する手段がなくなってしまったのです。
良かれと思って行ったワクチン療法ですが、このリンパ球の減少が遠因となり母の死期を早めたかもしれません。

リンパ球が減るということに関するリスクを明確に謳っている病院が少ないように感じます。医学的にリンパ球の減少は副作用とは違うのかもしれません。ただ現実的に母のようにリンパ球の減少により体力が奪われ、その後の治療や容体に影響を及ぼすことは充分に考えられます。
特に免疫治療を希望される方は抗がん剤などの標準治療では難しい患者さんや高齢者など、体力に不安を抱えていらっしゃる方が多いと思います。そのような方はこのワクチン療法がリンパ球を減少させるということも含めて、慎重に治療を進めていかれることを切に望みます。


とまあ、いろいろ書きましたがA先生、B先生には感謝しております。
その他、母をいろいろなところでサポートしてくださったヘルパーの方、介護マネージャー、リハビリの先生、病院の先生や看護師、励ましてくれた会社スタッフ・・・などなど、この場を借りてお礼申し上げます。

そして今、乳がんで頑張っていらっしゃる方が一日でも早く良くなるよう祈っております。

↓若き日の母です。
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テーマ:雑記 - ジャンル:学問・文化・芸術

2013.02.09 | | コメント(0) | トラックバック(0) | その他

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